アジア農民共に生きる会会報

Association of Asian Farmers for Cooperative Living (AFCoL)

〜有機農業によってアジアの農民の自立に協力しよう〜

発行:200月  第8号

有機農業の芽生え
戸松 正

 スマトラで活動を始めて3年余りが経過した。当初スマトラでは有機農業に関心を持っている人はほとんどなく、実践しているところといえば元の協力団体で あったウェスリー氏の農業トレーニング・センターしかなかった。
 今年6月の訪問時2つのNGOと、メソジスト協会を訪問し、お互いに意見交換を行った。その3団体とも農場を持っており、徐々に有機栽培に切り替えつつ あるという話である。これらの団体とも屋後君の人間性が功を奏し、忌憚なく話し合える関係が築かれつつある。次回訪問時彼らの農場を訪問することを約束し て別れた。また新しい情報としてスマトラの16のNGOが、メダンに有機ショップを作るという構想があるという。これらの動きに明るい方向を感じると同時 に、あまりにも早い動きに驚かされてもいる。
 しかし未だスマトラでは有機農産物を扱う店はない。屋後君や現地スタッフが何回も販路開拓の為に活動しているが、いまだ安定的に出荷できる店は一つもな い。そんな訳で作っても有機農産物として売れず、一般物として販売せざるを得ないものも多々ある。逆に農場の方は研修生や現地スタッフが増え、経営的には かえって支出は増えつつあり、運営上苦しい状況が続いている。しかし、前述したように、徐々に水面下での広がりや、動きが感じられるようになってきた。
 今まで自立農場建設ということを大前提にしながら活動を続けてきたが、あまり自立、自立ということを最優先しなくてもいいのかもしれない。少しずつでは あるが、スマトラで有機農業が有識者の間で広がりつつあり、継続していけば当然農場の自立も近々、必然的にそうなっていくような気もする。そして研修生が 一人一人と育っていってくれる状況を作り、多くの関係者と共に育んで行くことが大切だと思う。
 屋後君に今月も2つの団体から講演や技術交流の依頼がある。徐々に関係の輪が広がりつつあり、近い将来スマトラの有機農業が現地の人達によって次の段階 に進んでいくことを願う。

 〈メソジスト教会のメンバーとの話合いを終えて〉

         〈農場見学者を迎えて〉

有機農業を広める前に
 屋後浩幸

日本で講演や人前で話す事など皆無だった生活でしたが、インドネシアに来てからは、有機農業について農業関係の人へ講演をする機会が多くあります。私の拙 いインドネシア語での説明に真剣に耳を傾けてくれている姿に、私もできる限り有効な情報や農業技術を伝えようと真剣になります。
 特に農家の人に有機農業の哲学的な意味合いを説明しても、反応は良くありません。それよりも、経済的メリットを通して有機農業を説明すると彼らもすぐ実 践しようと言ってくれます。例えば、畝の有機物による被覆が挙げられます。
もみがらは比較的安く入手する事が出来、ブラスタギの農場でも畝をもみがらで覆っています。土壌が柔らかくなり、降雨による土壌の流失、泥の跳ね返り、ま た日光による土壌の乾燥を防ぐなどその効果は幅広くあります。農場まで私たちが行っている農法を見学しに来る人もいます。
 有機農業への転換や推奨も必要ですが、現在のマーケットの規模からするとそれが広まるのはもう少し先になりそうな気がします。それよりも、農薬のより安 全な使用法を伝えるようにしています。こちらの農民の農薬に対する意識は驚くほど低い状況です。例えば、農薬散布の際、マスクや長袖の服を着用しないのは もちろんの事、混合の際に 説明書きを読まず、適当に農薬を配合しています。濃度の確認は、素手でかき混ぜて舌で味見する人までいました。‘それはかなり危険ですよ’と説得した所、 そのおばさんは今まで20年以上このようにしてきたから大丈夫だ、と呆れてしまう返答を頂きました。このような人に幾らその危険性を説明しても無駄です。 それよりも農薬の価格上昇や、その効能の薄れている現状を認識してもらって、より少ない農薬散布で済むだろう方法を説明しています。また、畑を全て有機農 法に転換するのではなく、その一部を転換してその違いを比較してみることも伝えています。しかし、口頭で説明してもまた見学に来ても、有機農業に対して彼 らは半信半疑です。やはり、自分で実践して確認してもらう必要があるでしょう。
 インドネシア人の性向としてパイオニア精神を持っている人は殆どいません。誰かが新しい物事を創め、それが儲かるならようなら真似をする人が雨後の筍の ように出てきます。ブラスタギの農場も経営的にまだ自立運営されていないので、有機農業は彼らにとって、まだ魅力あるものではないでしょう。いまだ、出口 の見えないトンネル内の状態ですが、いつの日か広大な‘竹林’を見ることができる日を想い抱きながら前に進んでいる毎日です。

        〈人参の品種収量比較〉

メダンでの有機野菜のマーケティング
マニック ギンティン
 私は六月からブラスタギ・ナチュラルファームで働くようになったマ二ック・ギンティンといいます。以前、貴会の理事の鈴鹿さんと何年か仕事をしたことが あ り、そんな関係で知り合いました。実は一昨年九月から一時前任者の小島さんと仕事を数ヶ月したことがありますが、家庭の事情でやめさせてもらいました。し かし今回戸松さんから再度共に活動するよう云われ、この活動に参加するようになりました。現在主にマーケティングの仕事を担当しています。そんな訳でその 状況や考えを報告させていただきます。
皆さんご存知のようにメダンは比較的大きくて早期に発展した都市です。進歩的なものであれ、退化的なものであれ全ては、メダンがひとつのバロメーターに なっています。その為、メダンは人々の生活の不足を補う場所になっています。今回、私は有機農業を学んでいる者としてメダンを有機野菜のマーケット地にし たいと考えています。私は有機農業技術を学んでいると同時に、その野菜のマーケット拡大にも動いています。
 マーケット拡大にはとても多くの挑戦や困難があります。今まで私にはマーケットの経験や知識は全くありません。初心者の私が持っているのは、責任観とメ ダンで有機野菜がいつか広く受け入れられるという夢だけです。私は他の人のために永遠に働き続ける気はありませんが、可能な限り早い自立が必要だと思って います。
 一番の難題は、一般的な消費者には化学物質に汚染された食べ物に対して恐れが全く無い事と、有機農産物の価格の高さです。さらに、例えば有機野菜など有 機農産物のその見た目の悪
さも挙げられます。
 頻繁に私はメダンへ行き、可能性のあるだろう消費者やレストラン、その他農産物と関わりのあるところへ赴きます。しかし、大半は残念な結果に終わりま す。消費者は、一番大切なのは見た目、形の良さそして価格、と言います。もし、価格が低ければ多くの消費者を得る事ができ、利益も上がるでしょう。ただ単 に、歩き回ることは退屈で汗をかき、足は疲れます。
 困難に見えませんか?しかし、有機農産物のマーケットの拡大には、一歩一歩確実な歩みと
長期の忍耐力があればいつか陽の目を見ることが出来ると思っています。

     〈有機野菜の説明をする研修生〉

   〈順調に生育するカボチャ〉

コーヒーを試作して

戸松 正
今年2月のインドネシア訪問時、試験場から宿舎前の一等地20a を借用した。その半分にコーヒーが植えられており、コーヒーを抜き取り野菜畑として利用するように云われた。しかし矢澤副理事長の提案でコーヒー畑として 栽培を継続することにした。幸い近くで活動している木須君が以前、トラジャコーヒーで12年間仕事をしていた関係で彼にアドバイスを受け、コーヒー畑とし て改良することにした。悪い木は地際から切り、新芽を出させる。放任されていた木は側枝を整理し、枝の数を1/3〜1/4 にして採光、通風をよくした。 また弱っている木には良質の堆肥を与え、追肥をした。
 現地の農民は一般的に放任栽培にしており、生い茂ったコーヒーの木から未熟なものも混ざった状態で収穫し、調整方法もあまり知らず、いい豆も悪い豆も混 ざっており、仲買人から安く買い叩かれている。
 実際自分で剪定してみるとコーヒーの木は非常に硬く、現地の切れないノコギリやハサミで3日も続けるとバテバテに疲れてしまう。安く買い叩かれる現地農 民にとって剪定や収穫物の選別などしない理由はそこにある。
 赤く稔ったコーヒーの実(チェリー)を熟したものだけ一粒ずつ収穫し、チェリーをつぶし、2〜3日発酵させ、皮を除去し、洗い流す。その後10日程天日 で乾燥させるがこれも雨の多いブラスタギではなかなか大変である。乾燥後、再度内皮を除去するわけだがなかなか硬く手作業で行った為、相当時間がかかっ た。一連の作業を通し、変色果や奇形粒や小粒の豆を取り除く。それらの生豆を今回少量持ち帰った。焙煎を「バッハ」に依頼したが一応一級品として評価して いただいた。
 私自身日頃、あまりコーヒーを飲まないが自分で作ったコーヒーを試飲することを楽しみにしている。現地の農民の放任栽培と厳選したコーヒーの味は相当違 う。
 一般的にコーヒーは標高1200m以上がおいしいと云われている。有名になったトラジャコーヒーは800m〜1200mくらいで栽培されている。ここブ ラスタギは標高1350mあり、技術をより高めると同時に木がより成木化することにより、もっとおいしいコーヒーができるであろう。
 今後は農場の1つの小さなプロジェクトとしてコーヒーを育てていきたい。

 〈車もなく農場運搬道具として活躍する一輪車〉
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