2007年03月06日

黒澤浩樹〜空手界および空手を学ぶ人への提言

小島さんのブログで自分がこうしてコメントを書くのも変ですが、「悪友」の頼みという事で、私自身の空手観などについて書かせていただきます。
小島さんとはすでに20年来の友人ですが、自分が極真会館を離れる前後、些細な誤解が原因で、小島さんと疎遠になりました。今回、小島さんと塚本さんが書いた「大山倍達正伝」をきっかけに、また昔のような「悪友」関係に戻りました。自分は、まさに大山総裁が2人を再び巡り合わせてくれたと思い、心から総裁に感謝しています。
小島さんによれば、このブログの読者の多くが何らかの空手・武道の経験者という事で、少し自分なりの武道・空手観について語らせて頂きます。
自分は、大山総裁が亡くなり、いわゆる「極真会館」の分裂騒動が激しくなった最中に極真会館を離れた訳ですが、あれから10年を経ても、今だに納まらない分裂騒動を見ると、実際に道場で稽古をしている人達が不憫に思えてなりません。
強くなる為には、自分に与えられた100%のエネルギーを稽古に注ぐのが理想であるのは言うまでもありません。単に道場で練習するだけでなく、ウェイトトレーニングをやったり、栄養を考えた食事をとったり…。強くなる事を目的としたあらゆる事を「稽古」と考えるならば、自分が自由になる時間を100%、稽古に費やす事が必要なのです。
しかし、現在の分裂騒動は指導者だけのものではなく、それぞれの団体で稽古に励む人達にまで大きな影響を及ぼしてしまいました。分裂を繰り返す事によって、選手や道場生は本来100%費やすべきエネルギーを自らが望まない形で削がれてしまう。それが残念でなりません。
一方で、自分が一介の道場生として稽古していた頃に比べ、今は異常な程の情報が飛び交い、簡単に情報を得る事が出来る時代です。ある意味、このブログもその一つですが、ネットやメールが発達し、様々な情報に興味が向き、それに左右されがちです。ましてやメールが普及した為、簡単に他の道場や団体の人達と交流が出来るようになりました。
それは全て悪い事ばかりじゃありませんが、一つの「道」に集中する事が困難な、「我慢」が出来ない環境になってしまった事は憂慮すべきだと思います。強くなる為に必要な事は「情報」ではありません。一生懸命に汗を流す事です。「あの団体はどうだ」とか「あのルールが云々」とか、そんな情報交換をする暇があれば、一度自分が信じた道を徹底的に極めようと汗をかく事の方が何倍も大切です。このブログを読んでいる人たちも、情報の害や毒を十分に理解した上で自分の役に立てて欲しいと思うし、信念を持って汗を流して欲しいと思います。
私も極真会館を離れてから、PRIDEやKー1など全く異なる世界、ルールの試合に挑戦したりもしました。しかし、やはりそこはエンターテインメントの世界です。中には本当に厳しい稽古を積んで真剣に試合に臨む選手もいます。しかし実際には多くの有名選手は道場ではなく芸能プロダクションに所属し、主催者やテレビ局は「商品」としての見栄えのある選手を優先的に全面に打ち出し、派手な試合で勝たせるように仕向ける。一見格闘技の大会に見えても、その本質は芸能人の興行・ショー以外のなにものでもありません。
何も知らず、何も見えずに首を突っ込んだプロ格闘技の世界でしたが、痛い思いもしながら私は大切な勉強をさせてもらったと今は思っています。同時に、改めて自分は「武道」の道で生きるべき人間なんだと悟る事も出来ました。
現在、私が主宰する黒澤道場は、「極真空手」の流れは汲んでいますが、単なる極真会館の分派ではない、私自身の空手観と信念を体現する場所だと思っています。極真会館の分裂騒動から離れた今の私は、とてもいい環境の中で空手の指導をし、稽古に励めている事に充実感を覚えています。
極真会館の分裂騒動に関しても実際、私はこの数年間、全く無関心で何も知らずに生活してきました。残念ながら、というか幸運にもと言うべきか、小島さんと再会する事で、小島さんから頻繁に連絡を受け、また小島さんのブログを見るようになって(私は全くネットには目を通しません)やっと最近、極真空手だけでなく、他流派や他の格闘技の動きも知るようになりました。
しかし、さっきも書いたように、ネットの掲示板やメールは、時には毒になる事を絶対に忘れないで欲しいと思います。稽古が辛ければ一人で悩み、試合に負けても一人で悩んで、自分自身の力で這い上がっていくしか本当に強くなる術はないのです。辛いといえばメールで他人に相談し、負けたといえば掲示板を見たり書いたりして憂さを晴らすのは武道を志す人間にとって邪道だと自分は断言します。
ただ小島さんを擁護する訳ではありませんが、小島さんのブログを数か月間読んできて、小島さんには明確な主義・主張があり、小島さんは汗を流す事の大切さを理解しています。その点では、このブログは安心ですが、かといって、この場所に頼り切ってしまう事はよくないとも敢えて言っておきます。
今、私は40歳を超えました。しかし、稽古量は昔と殆ど変わりません。稽古内容は色々な面で変化してきましたが…。自分は現在、「極真」の空手着を着てはいません。しかし、自分は大山総裁の教えを忠実に守っているつもりです。
大切な事は極真空手の空手着を着る事ではなく、40歳になろうが50歳になろうが、常にもっともっと強くなろうと稽古に励む事だと自分は信じています。大山総裁が実践・経験した程、過酷な「超人追求」にはまだまだ及びませんが、それでも常に最強を目指し、汗をかいて稽古に臨む生活は一切怠っていないつもりです。
いつ迄も、いつ迄も、強くなる事に全力投球をする事、これこそが大山総裁への恩返しだと私は信じています。大山総裁が天国から、「君〜、まだ強くなりたいともがいているのかね〜。しょうがないね〜」と言われるつもりで稽古に邁進し、闘い続ける事。これこそが真の「極真魂」だと私は理解しています。

押忍


※このコラムは2006年12月、新しく会員制の「コミュニケーションBOX」を設立した際に、黒澤浩樹氏から会員向けに贈って頂いた原稿に若干修正を加えたものです。

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